映像デザイン科講師インタビュー企画  「現場のプロに聴け!!」第15回 中野先生

2015年2月24日 | By tdg-d | Filed in: 映像デザイン科.

映像業界で実際に活躍する講師陣に、現場のこと・今後の業界のこと・
就活に役立つお話などインタビューしました!
(担当:映像デザイン科アシスタント 加藤)

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第15回 中野先生(授業名:NUKE)
フリーランスコンポジター。NUKEとAfterEffectsをメインツールとして合成やエフェクトを手がけている。映画やテレビのVFXをメインに活躍しており、複数の専門学校にてNUKEの講師を経験している。

―中野先生が担当されている授業が1年生・2年生のVFX専攻の授業という事で、基本的にはNukeというソフトの授業ですか?

そうですね。Nukeを使って実写合成をメインとした、合成の授業をしています。
2年生は今年度(2014年)の春からなので、半年から1年、講師をさせていただいています。

※Nuke(ニューク)はThe Foundry社が販売する、ノード・ベースのデジタル合成ソフトウェア。映画やテレビのポストプロダクションに使用される。1カットずつを複雑に作りこむコンポジット作業に向いていると言われている。

―学生の様子など、見ていていかがですか?

自分と照らし合わせて、恵まれた良い環境でみんな勉強しているなーって思いましたね。
僕は4年制の大学を卒業して東京に来て専門学校に行ったんです。で、僕がやりたかったのは実写合成だったんですけど、そこはCG学科でCGの事しか学べなくて。PCのソフトしか無かったんですよ。
そこでは本当に基本的なイラストやAfter Effectでの合成くらいしか学べなかったんですけど、TDGはちゃんと色々な学科に分かれていて、実写合成をやりたい人にはVFX専攻がありますし、3DCG専攻・モーショングラフィックス専攻といろんなジャンルに選択ができるので、やりたい事を広く学ぶことが出来るのはすごくいいなぁ、と思いますね。
ここだと、高品質なカメラもあるし、グリーンバックスタジオもあるし…そういう意味では、すごく恵まれてるな!と思います。

※After Effectsは、アドビシステムズが販売する、映像のデジタル合成やモーション・グラフィックスなどのソフトウェア。主に映画の映像編集、CM制作、テレビ、ゲーム、アニメ、Webなどのコンテンツ制作に利用されている。レイヤーを重ねて画面作りをするレイヤーベースのため、時間軸に沿ってコンポジットするのに長けていると言われている。

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―ちなみに大学の頃はどんな勉強をされていましたか?

僕は関西出身なんですけど、兵庫県の大学の経済学部にいて、そこで4年間経済を勉強していました。(笑)

―経済から、映像に…!

元をたどると、僕ってこれといった趣味が無くて、何かを始めよう!と思った時に、当時Youtubeやニコニコ動画といった動画サイトが流行っていて、イラストなどを映像に入れてアップするのが流行ってたんですね。で、自分でもそういう事をやってみたいと思って。
最初はフリーのソフトで動画を作っていたんですけど、その次にAdobeのプロダクションプレミアムというのを買って、Photoshopで絵を描いたりAEでモーショングラフィックスを作ったり、Premireで編集したり…というのをしていましたね。

※Adobe Premiere(アドビ プレミア)はアドビシステムズが販売している映像編集を目的としたソフトウェアシリーズ。DVの映像などを比較的簡単に編集できる。

映像を仕事にしたいと思ったのは…大学3~4年生の頃、就職活動で50社くらい受けて、全部落ちたんですよ(笑)

―50社!!

元々文系だったので、映像関係とは全然違う業界を目指してたんですよ。でもそれが上手くいかなくて。
で、どうしようかな…と考えた時に、全部無理だったらむしろ自分の好きな事をやろう、と思って、大学を卒業したら東京の専門学校に行こう、って決めて。それで引っ越してきました。

―ちなみに専門学校というのは?

夜間部の学校だったんですけど、僕は半年で中退したんですよ。
4月に入学して、映像とは全然関係ないバイトをしながら生活していて。で、2ヶ月後のある時、そのバイトで大きなミスをして、それがすごくショックだったんですよ。で、もう口内炎がすごいいっぱいできちゃったりして。(笑)

―ハハハハハ(笑)

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その時、「こんな事をしに東京に来たんじゃない!」って思って、それがあってから1ヶ月でDEMO REELを作って、映像系の派遣会社に登録したんですよ。
そしたらすぐに電話が来て、ある実写映画の合成をしている会社をご紹介してもらったんですね。それが2010年の8月くらいで、その頃からもう働き出しました。

―というと、映像の勉強を始めてから業界入りするまで、割と早かったんでしょうか?

そうですね、多分すごく速かったと思います。すでに大学も卒業してるし、僕の場合、映像の仕事をしに東京に来たんだから、働けるなら働きたい、っていう気持ちだったんで。

―大学で就活を経験しているぶん、そこはもう、思い切ってやっちゃえ!みたいなところもありますよね。

そうなんですよ。それもあったので。
しかも1番最初に入った会社が実写映画の合成メインの会社で、本当にやりたいと思っていた事がそのまま出来るような会社だったので、すごいラッキーだったな、って。

―となると、業界に入ってだいたい…

もうすぐ5年くらいですね。今年で29歳なので、学生さんとも割と年が近いです。
よく学生に間違われるんですよね。(笑)

―先ほどおっしゃってた、映像関係の派遣というのは、どういったものなんですか?

インターネットで見つけた、映像系の会社を紹介する専門の派遣会社です。
まず登録して、自分の作品を見てもらえるようして、その作品から、どういう事が出来る人なのかを映像の会社さんが判断して呼んでくれる、というタイプのものだったんですよ。スカウトみたいな感じですね。

―就活をしながら、そういう方法で作品を見てもらえるようにしておく、というのも作戦としてありますね。

それは全然アリだと思いますよ。就活しながら派遣会社に登録しておけば、色々な所から声をかけてもらえるチャンスは増えると思いますね。ただ派遣なので、その雇用形態はちょっと…という場合もあるかもしれないですが、最初のきっかけとしてはそういう方法も良いとは思いますね。

―そういう所に出す作品のクオリティとして、「ポートフォリオに出せるような作品が全然無い!」とか思う学生も結構多いみたいですが、DEMO REELやポートフォリオのクオリティを引き上げたりとか、良い見せ方をするコツってありますか?

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僕は、まずvimeoなどのサイトで「Composing DemoReel」などで検索しって、上がっている動画をいっぱい見て研究しました。
DEMO REELって、基本的に「自分がどういう事をやりたいか」「今の自分はこれだけの事ができますよ」という事をアピールする映像だと思うんですよ。
作品をDEMO REELに入れている人がよくいるんですけど、それはあんまり良くないかなって思っています。見る人からすると、もう1~2カット見れば、その人がどれ位の仕事が出来るのか、もうわかっちゃうので。あんまり長くてもダレるし、カットごとのクオリティの差も激しくなっちゃうので、良い所だけ集めて…3カットくらいあればいいですね、DEMO REELなら。

例えばコンポジット志望の人がアピールするDEMO REELだったら、1カットの映像を3パターン位作って、その1カットを分解して、どういう過程で作ったかを見せられていればいいかと。で、最初と最後で、合成前と合成後でこれだけクオリティが違うんだよ!というのを、見てる人に解ってもらって、良いと感じてもらえればいいと思います。

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だから、僕もDEMO REEL用に作ったのは4カットだけなんですけど。で、自分が一番いいと思ったカットを、一番最初に載せるんですよ。
やっぱりDEMO REELを見る人からすると、一番最初のカットで自分の印象が決まると思うんですよ。だから一番最初に一番自信のあるカットを持ってきて「あ、この人はこれくらいの事が出来るんだな」って判断してもらう。
で、何カットか似たような感じで他のパターンの合成を入れて、コンポジット志望だったら「マスク切れますよ」とか「3Dトラッキングできますよ」とか「色やCGもこれくらい馴染ませられますよ」といった事を見せられれば良いんじゃないかな、と僕は思いますね。

―一番最初に、というのは重要ですね。私も、面白い作品は確かに見てみたいけど、何でもかんでも見るのが好きかといったら、そうではないので、「これ全部見るのに時間使うのもなぁ…」って。
だから、そういうストレスを与えない、という意味でも大事ですね。

そうなんですよね。本当に。

―学生さんたちの作品や授業の様子を見ていて、出来栄えなどはどうですか?

そうですねぇ。みんな、やりたい事が違って見えて面白いな、というのはありますね。
同じVFX専攻でも、ファンタジー色が強い合成だったり、実写に完全に馴染ませるような合成だったり…特色があって、その人それぞれの良い部分があったり特徴が見れたりしてて、面白いと思いますね。
他の授業でも良い先生方から教わっているのもあって、クオリティも高い、というか。僕らの時代よりもソフトウェアの質も上がっているというのもあるかもしれないですけど、学生レベルではないクオリティの人もいますし。そういう点で、レベルの高い学生が多いかな、っていう風には思いますね。

―1年生と2年生を見ていて、その辺りの差は感じますか?

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やっぱり、2年生の方が基礎があるぶん、細かいところでの出来の良さはハッキリわかりますね。
1年生はやっぱり、まだ基礎の部分なので、どちらかと言うとソフトをどう触ればいいのか、という部分を教える感じなので。
それと比べると2年生は、クオリティの差について言及できるので、そういう違いはありますね。

―確かに。特に前期2年の授業の後だと、ギャップも大きいですよね。
そういった底上げやクオリティの差はどういったところで出てくるのか、などをお聞きしたいです。

良いところはさっき言ったようなところなんですけど、悪いところを言うと、積極性が薄い子もいるな…って思うんですよ。
一番よくないのは、わからないところをそのまま放ったらかしにしてしまうことで。
作業をしていてわからないところがあれば質問して、わからないところを埋めてくれればいいと思うんですよ。聞くなら僕でもいいし、他の先生方もいっぱいいるし。
もちろん、同じ人から同じ質問を何回もされると「本当に聞いてるのかな…?」って思ったりしますけど。

―そういうところは、なかなか…人に言われて変わるのか、というところでもあるので、難しいですよね。

やっぱりそこは熱意の差なのかな、って。熱意という言葉で片づけるのはあんまり良くないかもしれないですけど。
教える側としては、基本的にみんな均一に教えてるんですが、でもその中で差が出来てしまうのは、やっぱり本人次第だと思うんですよね。
だから例えば、僕は担当が実写合成の授業なんですけど、フルCGの合成がやりたくて入学した人にとっては、あまり興味が向かないのかもしれない…とか思う事もあるんですけど。

僕もそうだったんですけど、映像をやりたくて東京に来たものの、最初に入った学校の授業内容があまり自分のやりたい事じゃなくて。
なので、学校課題の制作物よりも、家で自主制作したものを全部DEMO REELにしてたので。その辺りの差なのかな…って。
もちろん、仕事になってくるとまた話は別ですけど。

―新卒採用を募集している会社って「技術面はキャリアのある人の方が上だけど、新しい風を入れたい」という面が割と強くて。ですが学生さんって、仕事ってなった時に自分がちゃんと出来るのかどうか…って技術や経験値の面で不安になっちゃって、一歩引いちゃったりするところもあると思うので、そういった自信をどうやってつけたらいいのか…、と。

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うーん…難しいですけど、最初のうちはやっぱり、我慢することが多いと思うんですよ。色々と覚えなきゃいけない事が沢山あるし。
僕も最初はマスク切りばっかりで、「駄目だ駄目だ」って言われてましたけど、ある時、言われた事をちゃんと直して「これで大丈夫。OKだよ」って言われて、そこで「あ、これでOKなんだな」って判断もできるようになって、自信にも繋がりましたね。
最初はやっぱり、みんな自信無いんだと思います。だって初めてだし。

ただ、言われた事をきちんと出来ていれば、ある時「これ、いいじゃない」って褒められて、それが自信になってくる。
他人から認められると、それが自信になると思うんですよ。その積み重ねだと思います。

―まずキャリアを積む事から、という部分はあるかもしれないですね。

そうですね。
一番良くないのは、言われた事を出来ないままにしている状態で…出来ないというか、何で言われたとおりにしないの?って。
細かい部分でもいいから言われた事を1個できれば、そこはOK出してもらえて認められるので、そこから自信につながるので。
仕事では、上司に言われたように作るのは基本だと思いますし、専門学校の場合も、先生に言われたとおりに作れれば「ああ、この子は出来る子だな」って認めてもらえる。
だから、それが出来ない子っていうのは、言われた事をきちんとやっていないか、もしくはわからない事を放ったらかしにしてしまう子。
そうすると、言われた事をやらないので怒られる…という負の連鎖になっていくわけで。そんな気はしますね。ちょっと難しいかもしれないですね。

―うーん…でも、そこでちゃんと出来れば、ちゃんと結果にもなるし自信にも繋がる、という事ですね。ありがとうございます。
その、趣味で映像制作を始められたというところで、プロとしてやっていくのとアマチュアでやっていくのと…という違いもあると思うんですけど、もし大学の段階で就職できていたら、ずっとそこで働いていたと思いますか?

いやーどうなんだろう?大学の時に別の業界に入っていたら、そうなってたかもしれないですね。

―「仕事でやるのは辛い」みたいな事も人によってはあったりするので。

ああー、それはもちろんありますね。仕事でやるぶん、自分の好きなものを作る自主制作をしているわけじゃないから。
クライアントがいて、ディレクターがいてスーパーバイザーがいて、その都度チェックを受けて…。自分がやりたいと思っている事がクライアントと違ったりするので、そういうところを直すのはやっぱり苦痛だったりしますよね。
「純粋に楽しく映像を作りたい」と思ったまま業界に入ったら、そういう風に思うかもしれない。
でも仕事っていうのは、あくまで「仕事」なので。言われたものを作る、という感覚を身につければ、あんまり苦痛にはならないと思いますけど。

―先生ご自身としては、それがあまり苦ではなかったですか?

あ、最初は苦でしたね。すごい苦で、僕はすごく反抗してましたね。生意気でした。(笑)
今でも、一番最初に入った会社の同僚に「中野君ってほんと生意気だったよねー」て。
本当によく言われてて、確かにそうだったなぁ…って自分でも思いますね。

―(笑)まぁでも、そういう我の強さがあるからやっていける作家さんもいるのかな、とは思いますね。

それもあるかもしれないですね。けっこう、この業界の人たちは変わった人が多いので。そういう部分も関係してるかもしれないですね。僕も一概には言えないですけど。(笑)

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―今って、映画のお仕事が中心ですよね?ドラマとかCMはされていますか?

今はもう、ずっと映画ばっかりですね。
映画の仕事の場合、長ければ半年、短ければ1ヶ月か2ヶ月くらい関わる場合もありますね。

―やっぱり、映画の仕事をしていきたい、という感じですか?

いや、全然こだわってないです。ドラマやTVでもいいですし、遊技機系でも。
年々、やりたい事に対しての許容範囲が広くなってきていますね。映画がやりたくてこの業界に入ったんですけど、ドラマやったり、遊技機系のエフェクト作ったり、TVなどで使えるエフェクトを作っていったり…としていくうちに、映画以外の新しい事をやるたびに「面白いな!」と思ったりするので。やりたい事にあまり制限を設けないようにはしてきたので。
ただ、3Dソフトよりは、できればAEとかNUKEといった合成のソフトを使ってやりたい、という感じです。

―3Dというと、またちょっと違うスキルになってきますからね。

あ、あとスクリプトとかを、ちょっと勉強したいと思っていて。今年はそれが目標ですね。

―キャリアを重ねていくうちに、新しい目標を探っていけるのも、楽しいですね。

楽しいですね。

―では今日はこんなところで。ありがとうございました!

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今日のおやつ:神田達磨「羽根付き鯛焼き(粒あん・カスタード)」


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