映像デザイン科講師インタビュー企画  「現場のプロに聴け!!」第13回 岩村先生

2015年1月22日 | からtdg-d | ファイル: 映像デザイン学科.

映像業界で実際に活躍する講師陣に、現場のこと・今後の業界のこと・
就活に役立つお話などインタビューしました!
(担当:映像デザイン科アシスタント 加藤)

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第13回 岩村先生(授業名:映像演出)
武蔵野美術大学卒業。株式会社オムニバス・ジャパンCGI部にてキャリアをスタートし、その後フリーランスを経て2010年株式会社カラーバイコレクト設立。主にTVCMのCGIにて活躍している。

―岩村先生は1年生の授業を主に担当されているという事で、どんな風に授業を進めていますか?

1st(1年生前期の授業)は入学してすぐの授業なので、コンピューターの扱い方やファイルの形式・整理の仕方とか。本当に一番最初の、基礎中の基礎からです。
入ってくる学生の方々のスキルがけっこう違うので、出来る子は当然わかってる事かもしれないですが、わからない子ももちろんいるので。日本語入力とローマ字入力の違いとか。
その次にデザインや、映像を作る時の心構えを。「合成」っていうのはこういう事をするんだよ、とか。
コンピューターという道具についてと、それ以前の、鉛筆で描くアイディアの出し方といったところから入りますね。

―で、今の授業(2nd、1年生後期)でやっているのが…

それの応用…まではいかないけど、実際にコンピューターを触ってみよう!と、演習課題でガンガン作らせてます!(笑)
毎日、ひたすらコンピューターに触れてもらいたいので、私の授業は課題が多いです。…多いですか?

―(カメラ係の学生)まぁ…多いです。

(一同、笑)

毎週、課題は出すようにしています。じゃないと、作品をわざわざ作らないと思うんですよ。私も仕事でCGをやっていますけど、それ以外で自分から制作する方ではないので。
ほぼ仕事と同じスタンスで「これは○日の提出で、こういう事をやってきてほしい」っていう目的も含めて先に提示して、それぞれ自分たちで勉強してきたスキルを使って、常に作業してもらう感じです。…ちょっと大変そうなんだけどね。(笑)

―でも実際に課題が無いとやらない、っていうのは、あると思います。
 やる人とやらない人で、そこで差がどんどん開いていっちゃいますからね。

その差が、スキルの差になっていく気がしますね。

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―最近、岩村先生の授業での「自分」をテーマに作品を作る、という課題で「自分って何だ…??」っと考え込む学生さんも結構いまして。
 技術的なものというより、発想力を養う課題を出していらっしゃる印象があります。

そうですね。基本的にデザイナーやCGクリエイターになると、受注がほとんどになり、「これを作ってください」とオーダーが入るんですけど、そこに“色”をつけられないと生き残っていけないので。
スキルというのは、マニュアルを見れば誰でも勉強できる事なので、そうじゃない部分を一番鍛えるように…発想と、それを展開していく力や 実際に作品に落とし込んでいく力が必要になってくるので。
そこで、一番最初に出されたテーマから出した発想をどういう風にビジュアルに展開していくか、というところを、かなりたくさんやらせているつもりです。

―出来上がったものを見て、どうですか?

まだ学生さんなので、出来上がりについてはプロの目で見ればアレコレあるんですけど、それよりも、ちゃんと目的通りに作ってきているか、という意味では、ノウハウが解ってきている子は結構います。
あとは、会社に入ってからでもいいし、趣味の時間でもいいし…発想さえあれば、道具は自分から学べば何でも好きなように作れるようになると思いますね。

―発想力というと、専門的な技術を身につけるだけだと鍛えにくいものなのかな…と思うんですけど、そのあたりの差について、先生は感じますか?

感じます。やっぱりNukeやHoudiniといった高性能なソフトだけあっても、何を作るかを鍛えないとしょうがないとは思っていて。紙と鉛筆でも映像は充分作れる!って言っちゃったりもするんですけど。

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―アイディアの源流、と言いますか。

そう。コンピューターはただの道具だから、人間が持つ発想力の方を大事にしないと。授業でもそういった部分を鍛えることは必要だと思いますね。

―なかなか難しいところでもありますよね。発想ってどうやったら鍛えられるんだろう…とか。

難しいですよね。とにかく、よく考えて物事を見て、よく考えて作品を作る、というところからだと思います。
みんな消耗品のように、アニメの1話2話3話…って、さらっと観ちゃってそのまま終わっちゃうかもしれないですけど、例えば背景の上にキャラクターがいて、その背景はどういう役割になるのか、背景美術の人たちも考えて作ってますから、この学校にいる人たちは、そういう所をちゃんと読み解くような学生になってほしいな…って。
作り手の思いをちゃんと受けて「あ、これはキャラクターを目立たせたいから、背景をこうしたいんだな」「自分だったらこうするのになぁ」とか。そうやって、頭を使って映像を見て、頭を使って映像を作る、というのを繰り返していくと、発想もどんどん広がるんじゃないかと思いますね。

―1stの最初から今まで授業をやっていて、学生さんたちの変化を感じますか?

やっぱりスキルはどんどんついてきています。もちろん他の講師の先生方が一生懸命教えてくれるから、学生さんたちもスキルアップしているのもすごくわかるんですけど。
作業していて「やりたいことが出来ない!」ってなった時や、「何回やってもデータがココだけ壊れる…」とか、自分から頑張って直そうと努力することで、そういったトラブルに対応する力が鍛えられてきている印象を受けます。
先生も神様ではないので直せないものは直せないし。となると、やっぱり作りながら体験して、自分で何とかして直すしかないので。

あとは提出についてですね。提出って、仕事をする上でお金をもらうには必ず必要な事なので、1秒でも遅れたら駄目だっていう厳しい世界である、と自覚しないと…。
授業や自主制作だったら実際は大丈夫なのかもしれないけれども、そういう試みでやらないと どんどんズルズルと遅れていっちゃいますよね。私も含めて、人は自分に甘いので。

―〆切があるぶん、ちゃんと出来る、みたいなところもありますしね。

あるある。その期間頑張って、集中してやろう!っていうのは絶対ありますよね。
それに、時間の使い方を上手にするのも、学生の時から訓練しておくと良いと思います。まぁ、頭を使っているうちに、自分の行動もどういう風にすると効率が良いか、という事もわかってくるでしょうけどね。

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―自分のペースというのを、自分で作らないといけないですよね。

1つの仕事を自分で受けて、1週間で終わるのか1ヶ月かかるのか、終わるか・終わらないかを判断して、それを相手に提示しなきゃいけなかったりする事もあるので。
「○○さんだったら何時間で終わる?」→「1週間かかります」→「じゃあ、1週間スケジュールおさえておきます」って、それで仕事は成立するんですけど、「わかんない」ってなったら…

―「この人に仕事任せるの恐いなぁ~」って、なっちゃいますね。(笑)

(笑)だから、そういう所も絶対仕事に繋がっていくと思います。

―そういう意味では、課題がちゃんとあるのも、良い機会ですね。

だって、仕事だって課題みたいなものだもの。もう仕事が無い=課題が無い、って事なので。…で、=収入が無い!(笑)

―うわー、恐い!(笑)
 もっと言うと、社会から必要とされないのが一番恐い!

ああー恐い!結構、壮大な話になってきたかも…!(笑)
会社に入ってからも、プライベートの時間と会社で仕事をする時間と、終わらなかったら自宅に持ち帰ってやる時間と…ってあると思うけど、やっぱり自分で時間をうまく使わないと寝る時間が無くなるし。で、寝る時間が無いと病院入る事になるし…。でもお給料は結局変わらなくて「私が稼いだお金、全部医療費になってる!」みたいな悪循環になっちゃうのも良くないので。

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―お仕事では、映像制作のどのあたりを担当されていますか?

私は基本はCG屋さんで、テレビCMの仕事が多いです。プロジェクトにもよりますけど、撮影の現場に入ることもありますし。プロデュース…受注から、最終的にコンポジット担当の方にデータを渡すところまでですね。なので、最後のオンライン編集はやらないです。

※オフライン編集とオンライン編集
オフライン編集とは、撮影した素材を完成映像の尺にあわせて編集をする作業のことで、仮編集とも言われる。
対してオンライン編集とは、オフラインで決まった素材をカット毎に手を加え、細かい調整や仕上げをする作業のこと。オンライン編集で仕上げた映像が完成版となり、実際の放送などで使用される。

―と言いますと、プロジェクトの最初の部分から関わる事が多いですか?

多いです。あとは、「これをCGにしなきゃいけないんだけど、技術的にどういう風に展開していったらいいのか」「撮影はいる?いらない?」といった、スーパーバイザー(監修)となる部分も仕事によってはありますね。そういう時はご依頼先に赴いて仕事することもあります。

―そういった、CG業界・映像関係に関わるようになったきっかけなどはありますか?
 学生の頃のお話なども合わせてお願いします。

学生の時、今はもう無くなってしまったんですけどNHKの美術部でアルバイトをしていました。そこで3年間ほど、デザイナーさんの作る図面をCADで清書するオペレーターの仕事をしていました。
で、そこにHPのコンピューターが何台か入っていて、そのうちsoftimageが入ってきたりして。丁度その頃、「脳と心」などのNスぺ番組でコンピューター映像が導入される時期でしたね。
で、3DCGのソフトに興味を持って、そういった映像を扱う会社を選んで就職しました。

当時はまだコンピューター1台で1500万円位かかる時代で、使ってるソフトウェアも650万円とか。1人1台というのはできなかったので、仕事なのに3人で1台を使っていました。コンピューターを勉強する学校なんて無かったので、そこで勉強しましたね。

※Softimage(ソフトイマージ)は、オートデスク社の子会社であるSoftimage社によるハイエンドな3次元コンピュータグラフィックスの制作用ソフトウェア。映画のVFXやゲーム制作などで使用されている。2014年4月14日にリリースされたAutodesk Softimage 2015で最終バージョンとなった。

―ちなみに学校ではどういう勉強をしていましたか?

大学は武蔵野美術大学の空間演出デザイン専攻でした。今はそんな事ないでしょうけど、当時の美術大学はMacなどのコンピューターもまだ無いような時代でしたね。

―空間演出というと、舞台とか、インテリアなどですか?

そうですね。その当時はシニックデザインとディスプレイデザインに分かれていて、私はディスプレイデザイン…商業スペースデザイン科にいいました。大学の友達はみんな、インテリアデザイナーや代理店に入ったり、雑誌の編集やアートディレクションしていたりとか、そういう人が多いですね。
その後の進路で言うと、少し不思議な方向に行っているかもしれないですね。当時Quick Timeなんてものも全然無いし、Hi8が精一杯な感じだったので、もうダビングにダビングを重ねて編集していました。

※Hi8 (ハイエイト) は、ソニー社が提唱、製品化した家庭用ビデオの規格。8ミリビデオをより高画質にするために開発されたもの。

―就活の話となると、やっぱり大きい会社に入るのか、小さい会社に入るのか、後にフリーランスとしてやっていきたいのか…といった選択肢もあると思うんですけど、そういった分岐点のような出来事はありましたか?

私の場合、新卒でかなり大きい会社に入りました。
で、社会とともにコンピューターが徐々に普及してきて、自分も仕事のスキルが上がって、仕事も自分を指名してもらえるようになって。そうやっていくうちに自分1人に対しての仕事量がかなり増えてきたので、もう仕事しかしてない!っていう人生を歩んでいる時期がありまして。もう全然家に帰れない、みたいな。で、内心キツくなってきてしまい…。

―ああー、ありますねぇ…。

仕事は楽しいんですけど、ひっきりなしに仕事が入ってくるのが辛くて、たまには旅行も行きたいよ…とか。
それで、自分でスケジュール管理をしたくて、上司に相談して独立しました。とはいえ、外注という扱いでしばらくその会社にお世話になって働いていました。
で、お金を貯めて、3人くらいでシェアオフィスという形で共同の事務所を作りました。自分でMayaを買って、コンピューターを1台買って。そこからずっとフリーランスとしてやっていきました。

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大きい会社だと自分で仕事の出し入れをコントロールする訳ではないので、「会社の所属自体は問題無いけどスケジュールの管理を自分でやりたい」と言って独立する方もいますね。VFXやっている方とか、周りでも結構いらっしゃいますよ。
「1つ大作やったら少し休みをとりたい」という方もいますし、新しいソフトもどんどん入ってくるので、その研究に時間をとる方もいるでしょうし。

―その辺りも、クリエイターのタイプによって違うかもしれないですね。
自分は作業に集中したいから、管理とかは会社で動いてもらいたい、という人とか…

もちろんそうだと思います。ずっと会社に所属して活躍してる方もたくさんいるので。
一方で、自分は管理職も向いてないし、作っていたいのに「プロデューサーになって欲しい」とか言われてもなぁ…とか思う人もいるでしょうし。人によるかと思います。

―入ってみないとわからない、というのもあるでしょうね。

でも、学ぶものはどこに行っても学べると思うので。ひとりでやろうが、小さい会社だろうが大きい会社だろうが。
社会に出れば、何かしらは学べるとは思います。

―ありがとうございます。
 では、学生さんやブログの読者に向けて、制作をしていく上で気をつけてほしい事や、今のうちにやっておくといい事など、アドバイスはありますか?

さっきも言った「よく考えて」というのは、もう、小学生・幼稚園からでもやって欲しい…とか思っちゃいますけどね。
例えばデッサンでも、前に学生に「マイクをデッサンする」という例を出したんですが、その物をよく見て 解釈する!ていうのが大事なので。マイクをただ見て描くだけじゃなくて、目をつぶっていてもマイクを描けるようになるのがデッサンだから。工業製品で、鉄のような物で出来ていて、冷たくて、丸い部分には網がかかって、手で持つものだから持つ場所はこの位の長さはあって…て事まで、きちんと見ていけばわかりますよね。

そういった、ものを見るだけではなく ちゃんと昇華する力、みたいなものがあると、CGにも絶対に役立ってきますからね。
モデリングだってそうだし、ライティングもそうですよね。光がこういう方向なら、この部分は暗くなるはず!とか。
なので、映画とかもそういう視点で見てみると、制作者の意図がより強く理解できるんじゃないかと思います。

―では今日はこんなところで。ありがとうございました!

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今日のおやつ:御菓子処 さゝま「白玉・松葉最中」


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